ぽっかり2011/06/12 13:56

おさないころ
日曜になれば
母が朝食のしたくをするひま
父がぼくの手をひき
おもてへさんぽにでるのがならいだった。

なつのある朝のこと
いつものようにさんぽにでたふたりが
丘のうえまできたとき
ふいに父があしをとめた。
みると
父は   
そらにまだのこる
まるい月をじっとながめていた。
あたりは造成地で  
そこらじゅう
あかつちがむきだしになっていた。

凪にわいたかぜのように  
父はいった
「地球って、どこだ?」
とうとつな問に
ぼくはとまどっていた。

「ここだ…」    
そらをみあげたまま
父はそういうと   
サンダルばきのあしで
ドスン

じめんをふみならした。    
そのとき
いっしゅん       
ぼくのなかで大地がゆれた。  
そうして
じめんがまるで      
アルマジロ
のようにまるまって
ぼくや父をのせたまま
またたくまに
はるかな宙へと
すいあげられた。

うちゅうのかたすみ 
ぽっかり
うかぶ 
ふたつの球体。

となりから
はにかみながら
月が
こっちをみていた。

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